既に一ヶ月以上経っているためにガラガラと思ったのだが、意外にほぼ満員だった。
しかし内容は期待してもいなかったにもかかわらず、更に期待はずれというしかない。いや90年代以降の宮崎駿作品同様にやはり期待外れであったが、それでも容易な筋という点は良かったのかもしれない。
日本の高度経済成長の原動力が戦前の技術開発にあったことを知らしめた点は評価できる。これは戦後に発展した技術の源泉を示すものとして大いに知るべき点だからだ。
しかし一方でそれを描写する堀越二郎の飛行機開発の物語はほとんどの点で実写向きであり、アニメとしては不適切といえたのがミスマッチといえた。興味深くはあるのだが、決して楽しいシーンとは言い難いというのが矛盾している。
また本作でロマンス部といえる菜穂子との邂逅および恋愛パートだが、アニメとしてもこの部分が一番わかりやすく感銘を得られる部分だったが、これが一方で単なるオリジナルだ。
このことが意味するのはアニメや創作には必要かもしれないが、本作が堀越二郎伝描こうとしていた以上は、残念ながら完全に不要な部分であることを示している。このことは元になった同名小説とのキメラではあり、感動する作品とする上では必要なのかも知れないが、本質を失わせてしまう中途半端なものにしてしまった感はある。
かつてのイタリア王国の飛行家と絡む夢パートは夢なだけに自由度が高く、従来の宮崎駿世界が顔を出していた唯一の舞台とも言えたが、そのギャップが楽しめた。大きな技術開発にも夢は必要だということは確かに重要だ。
この夢にジブリの原点を示唆しているように、見果てぬ夢こそが宮崎駿の作り上げた世界全てに共通していることであるのは間違いあるまい。