我が読書記録にも簡単にだが、記録している。
・星を継ぐもの(創元SF文庫/ジェイムズ・P・ホーガン/池央耿)
その漫画版が出ているというのは知っていた。藤子・F・不二雄全集の何かの本の月報で、この「星を継ぐもの」漫画化した漫画家の星野之宣が登場していて、そこで知ったような気がする。
星野之宣自体は知らない漫画家だったが、原作の好きさ加減、藤子・F・不二雄全集で知ったこと、更に星野という名字(HAHAHA)、これらの相乗効果の結果、1冊1200円以上という原作の創元SF文庫の二倍近い値段をも打ち破って購入と相成ったのだった。
前置きが長すぎるので、本文が書けなくなるといういつものこと。
原作については「月面に宇宙服を着た人類の死体が見つかり、それが5万年前のミイラ」という驚きの謎の提出で始まる。
地球史(古代生物〜クロマニヨン人に至る古代生物を含む)、SF(宇宙、惑星、異星人)、そして魅惑の謎(本格ミステリにおける論理性)といった私の琴線に触れる分野が勢揃いであり、小説としてもキャラクターが魅力的なので素晴らしいの一言なのだ。
さて、ではこの漫画版はどうかと言えば、まだ2巻までしか出ておらず完結はしていないが、端的に言えば部分的には素晴らしいと言える。
部分的に素晴らしい点
・原作が1970年代のため現在においては無理がある設定という欠点を、近年の自然科学(生物学や地球科学)分野の簡潔かつ丁寧な説明で納得できる形でカバーしていること。これがまた非常に興味深い考察結果になっている。
・古代生物や異星生物を特徴的を出した上で素晴らしく丁寧に描写していること。活字からは容易に得られない描写には感動すら覚える。
・ハント博士やダンチェッカー教授といったキャラクターを魅力を損なうことなく表現できていること。
部分的に悪い点
・本格ミステリのテイストを大きく損なっていること。
正直これは残念な点だ。まず「星を継ぐもの」だけではなく、その続編も混ぜ混ぜにしてしまった弊害という点が大きい。またスピーディな展開に力を入れすぎて、論理的思考の過程という重要な部分が大きく欠落してしまっているのも原因になっている。
やはりSF分野の漫画家だからというのもあるのだろうか。サスペンス風味はあるのだが・・・。
このように悪い点が出たのは、原作とは異なるプロットを取っていることが善し悪しを生み出してしまったことが原因とも言える。もっとも全体を通せば、現在の2巻までの時点では素晴らしい点の方が勝るだけに今後も楽しみにしたいところだ。